長引く咳

なんで咳(せき)が出るの?

なんで咳(せき)が出るの?咳は本来、空気の通り道にたまった分泌物や、異物を外に出すための体の防御反応です。
しかし、風邪をひいたりして気管支(空気の通り道)に炎症が起きると、咳に関わる神経は敏感になり、普段では何ともないような弱い刺激で咳が出て苦しくなってしまいます。
咳に関わる神経は、のどや気管支だけでなく、食道、胸膜(肺を覆う膜)、心外膜(心臓を覆う膜)、耳などにもあります。このため、様々な病気が咳の原因となりえます。


咳にはどんな種類があるの?

咳が続く期間によって、急性(3週間以内)、遷延性(3〜8週間)、慢性(8週間以上)に分けられます。

急性の咳の原因

最も頻度が高い原因は、風邪やインフルエンザなどの感染症です
若くて持病がない方に、のどの痛みや微熱とともに咳が現れた場合、そのほとんどは軽い感染症によるものです。7日間程度で自然に良くなるため、症状が悪化しなければ様子をみて良いでしょう。
ただし、ご高齢者、持病がある方(肥満、COPD、糖尿病、高脂血症、高血圧、腎臓病、がん、免疫を抑制する薬の使用など)は、感染症は重症化しやすいため、早めに受診するようにしてください

遷延性、慢性の咳の原因

ほとんどの原因は風邪以外です。具体的には、咳ぜんそく、副鼻腔炎、COPD、癌、結核などの特殊な感染症、間質性肺炎、心不全などです。命に関わる病気や、長期的な治療を必要とする病気が隠れている可能性が高いため、咳の程度が軽くても、しっかり検査をして原因を調べる必要があります

咳にはどんな種類があるの?


どんな時に病院を受診すれば良いの?

咳が2週間以上続く時には、呼吸器専門医のもとに受診してください。通常の風邪とは違う病気の可能性が高いためです。

また、以下の場合には、咳の期間が2週間以内であってもすぐ受診してください。重篤な病気(気管支炎、肺炎、喘息発作、心不全、COPDの急性増悪など)の可能性があります。

  • 痰の色が白から黄色や緑に変化した。
  • 血痰が出る。
  • 咳が強くて眠れない。
  • 熱が下がらない。
  • 呼吸をする時にゼーゼー、ヒューヒューと音がする。
  • 息が苦しい。階段の上り下り程度の動きで、息切れ動悸が生じる。
  • 胸が痛い。
  • 意識がもうろうとする。

長引く咳の原因には、どんな病気があるの?

長引く咳(2〜3週間以上)で来院された方には、まず胸のレントゲン(必要があればCTも)を実施します。レントゲンで異常が見られるかどうかで、原因となり得る病気をしぼるためです。

胸のレントゲンやCTで異常が見られるもの

肺がん

がんが気管支や肺を圧迫すると咳が出ます。早期の肺がんは、特徴的な症状(血痰、息苦しさ、痛みなど)がほとんど出ないことが多く、自分で気づくことが難しい病気です。このため、長引く咳があればレントゲンやC Tが必須です

肺結核、非結核性抗酸菌症などの特殊な感染症

一般的な細菌が感染して起こる肺炎は、高熱を伴います。しかし、結核、非結核性抗酸菌などの特殊な微生物は、感染してもほとんど発熱せず、重症化する直前まで咳しか出ない患者さんが多くいらっしゃいます。レントゲンやCTでこれらの感染症が疑われた場合、痰の培養検査などを行います。

間質性肺炎

肺の間質(空気の通り道である気管支は、枝分かれして肺胞という袋状の組織につながっています。この肺胞の壁を間質と言います)に炎症が起こり、肺が硬くなる病気です。
リウマチなどの膠原病、アレルギー、薬剤、喫煙などさまざまなものが炎症の原因となります。はっきりと原因を特定できない場合(特発性と呼ばれます)もあります。

心不全

心臓の機能が悪くなると、気管支や肺がむくんで咳が出ます。レントゲンでは、心臓が大きくなっていたり、肺に水がたまった様子が見られることがあります。

胸のレントゲンで異常が見られないもの

咳ぜんそく

気管支ぜんそくの一歩手前の状態です。気管支ぜんそくと違い、喘鳴(呼吸をするときにヒューヒュー・ゼーゼー音がする)は見られず、咳だけが出ます。「風邪を引くたびに咳が長引く」という方は、咳ぜんそくの可能性が高いです。
治療は吸入ステロイド薬が中心となります。咳ぜんそくは、放っておくと30-40%の方が気管支ぜんそくに移行します。気管支ぜんそくになると完全に治ることは難しく、ほとんどの方は治療を長期間続けることになります。気管支ぜんそくに移行する確率を下げるため、しっかりと治療することが大切です

アトピー咳嗽(がいそう)

のどのかゆみ、痰がからまない咳、が主な症状です。アレルギー性鼻炎、アトピー皮膚炎などのアレルギー疾患を持っている方に生じやすい病気です。
咳ぜんそくと同じくアレルギーに関係した病気であり、症状も似ていますが、咳ぜんそくと違い気管支ぜんそくに移行することはほとんどありません。このため、咳がおさまれば治療を終了できます。治療は、抗ヒスタミン薬、吸入ステロイド薬などを使用します。

副鼻腔気管支症候群

副鼻腔炎(蓄膿症)と気管支炎が長く続く病気です。後鼻漏(鼻水がのどに流れること)、鼻水、鼻づまり、咳払いなどの副鼻腔炎に関連した症状と、咳、痰などの肺に関連した症状が続きます。肺や鼻のCT検査が診断の参考になります。治療にはマクロライド系と呼ばれる種類の抗生物質を少量長期間使用します。

後鼻漏症候群

鼻水がのどの方に落ちて流れ込む状態です。のどに何かつまったような違和感や、咳が出ます。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が関わっていることが多く、副鼻腔炎であれば抗生剤を、アレルギー性鼻炎であれば抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を使用します。

胃食道逆流症

胃酸が胃から食道に逆流することで、胸焼けなどの症状が出る病気です。逆流した胃酸が、食道やのどにある神経を刺激することで咳が出ます。咳は食事、姿勢の変化(前屈みになる、仰向けで寝る)で悪化しやすくなります。胃酸分泌を抑える薬を使用して治療します。

感染後咳嗽

風邪などのウイルスが咳のセンサー(咳受容体)に感染して神経が過敏になり、ウイルスがいなくなった後もしばらく過敏な状態が続く状態です。自然に咳は少なくなり、最終的には治癒します。症状がつらい場合には、いわゆる咳止めを一時的に使用します。

COPD

タバコの煙で気管支や肺が破壊されてしまう病気です。タバコを吸っている方、過去に吸っていた方に長引く咳がみられた場合には、COPDが疑われます。COPDは初期には息苦しさは出ません。このため、「年をとったせいで風邪をひきやすくなった」、「タバコの煙のせいで咳が出た」、と思い込んでいる方も多くいらっしゃいます。


診断のために、どんな検査をするの?

以下のような検査を組み合わせて原因を特定していきます。
なお、検査ではっきりとした診断がつけられない場合には、最も疑わしい病気に対する治療を開始し、その効果があるかどうかで診断を行うこと(診断的治療)もあります。

問診

咳の原因となり得る病気に特徴的な症状、経過がないか確認していきます。

咳ぜんそく

  • 夜〜早朝に悪化する。
  • 決まった季節になると咳がひどくなる。

アトピー咳嗽

  • のどがイガイガする。
  • ご自身またはご家族が、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・結膜炎を持つ。
  • 決まった季節になると咳がひどくなる。

副鼻腔気管支症候群

  • 痰が出る。
  • 鼻水や鼻づまりがある。
  • 鼻水がのどの方に落ちて咳払いしたくなる。
  • 副鼻腔炎(蓄膿症)になったことがある。

逆流性食道炎

  • 食後に胸焼けがする。
  • すっぱい液が口まで上がってくる。

COPD

  • タバコを吸っている、もしくは過去に吸っていた。
  • 階段や坂道で息苦しくなる。

薬の副作用

  • 咳を誘発するような薬を内服している。

レントゲンやCT

肺がん、肺炎、結核、間質性肺炎、心不全など、レントゲンやCT検査で異常が現れる病気が隠れていないか確認します。

CT検査

呼吸機能検査(スパイロメトリー)

呼吸機能検査(スパイロメトリー)筒状のマウスピースをくわえた状態で思い切り息を吸ったり吐いたりして、息を吸う力・吐く力を測定します。気管支ぜんそく、COPDなど、空気の通り道が狭くなる病気では、息を吐き出す力が低下しています。

FeNO(呼気中一酸化窒素濃度)

吐いた息の中のNO(一酸化窒素)の濃度を測定する検査です。アレルギーによって炎症が起きた気道の表面では、さまざまな物質が作られますが、その1つがNOです。吐いた息の中のNO濃度を測定することで、気道にアレルギーに関連した炎症が起きているかどうかのヒントになります。
また、NO濃度が増えている患者さんでは、吸入ステロイド薬の効果が良いと予想されます。

血液検査

血液検査感染症に関する項目や、アレルギーに関する項目(好酸球数、非特異的IgE抗体、特異的IgE抗体など)を調べることがあります。

喀痰検査

痰をとって培養検査を行います。痰の中に細菌がいないか確認します。


どんな治療をするの?
とりあえず咳止めではダメ?

ここまで書きましたように、多くの病気が咳の原因となり、治療法はそれぞれまったく違ってきますこのため検査をしっかり行い、きちんと診断をつけることが重要です
市販薬や病院でよく処方される咳止めのほとんどは、咳の反射を強引におさえる薬です。ひどい咳で苦しく、生活に支障が出ているような場合には、検査よりも咳止めを優先して使うことがあります。しかし、「とりあえず咳止め」を繰り返して生活していると、その間に原因となった病気は進行してしまいます
軽い咳でも2週間以上長引くのであれば、呼吸器専門医のもとを受診するようお勧めします