痰が絡む

なぜ痰が出る?

なぜ痰が出る?痰とは、気管や気管支で過剰に産生された分泌物が口から排出されたものです。 気道の分泌物は健康な人でも常に少しずつでていますが、普段は気道表面から再吸収されたり、繊毛の働きによって喉まで上がってから無意識に飲み込まれたりしているので、あまり意識されません。
過剰な分泌物が気道内に貯まると咳が誘発されて痰として排出されます。過剰な気道分泌は、外界から細菌やウイルス、煙やほこりなどの異物を吸い込んだときの防御反応として生じます。また、気道の炎症や腫瘍でも生じるため、痰の増加はほとんどの呼吸器疾患で随伴する症状です。


痰の絡む病気

気管支ぜんそく

気管支喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こし、発作的に気道が狭くなる疾患です。発症すると、咳、痰、ゼーゼーという喘鳴、息苦しさ、呼吸困難などの症状が現れます。

気管支ぜんそく

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれている疾患の総称です。原因の多くは喫煙で、発症すると咳、痰、息切れなどの症状を起こします。また、ゼーゼーという喘鳴や呼吸困難など、喘息に似た症状が現れることもあります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

肺炎

肺の中にウイルスや細菌が入り込んで感染し、炎症が起きた状態です。典型的には咳、痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの症状が現れます。しかし、ご高齢者では、肺炎に特徴的な症状が現れにくいため、受診のタイミングが遅れ、早期に治療を開始できないことが多くあります。特にご高齢の方、持病がある方は、「調子が悪いから風邪だろう」と決めつけず、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

肺炎

気管支拡張症

気管支拡張症とは、先天的な要因や気管支が繰り返し炎症を起こすことで、気管支が拡張してしまった状態の疾患です。
主な症状は、咳、痰、血痰、喀血などになります。

肺結核

肺結核とは、結核菌が肺に感染して起こる疾患です。
発症すると、咳、痰、血痰、倦怠感、発熱、体重減少、寝汗などの症状を引き起こします。また、肺結核は空気感染することが特徴で、感染者が結核菌を含んだ咳をすることで、周囲の人に感染が広がっていきます。

肺がん

肺がんでは、咳、痰、倦怠感、胸痛、体重減少といった症状が現れますが、これらの症状は肺がん以外の呼吸器疾患でも現れることや、初期では自覚症状がない場合も多いため、発見が遅れてがんが進行してしまうケースもあり、注意が必要です。
当院では、胸部CT検査によって肺がんの早期発見に努めています。

肺がん

誤嚥性肺炎

食べ物や唾液などが誤って気管内に入ってしまう状態を誤嚥と言います。誤嚥性肺炎は、嚥下機能が低下することによって唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引し発症します。
主な症状は、発熱、咳、痰ですが、何となく元気がない、食欲がない、のどがゴロゴロなる、などの非特異的な症状のみがみられることもよくあります。

後鼻漏

鼻水が鼻から喉の奥に垂れ込んだ状態を後鼻漏といいます。鼻水がたくさん喉に流れ込むことで、喉の違和感や咳などの原因になります。喉に絡んでしまうのは鼻水であり、気管や気管支から出てきた分泌物ではありません。このため正確には「痰が絡む」病気ではありませんが、患者さんご自身が感覚的にこれらを区別することは難しく、多くの方が「痰が絡む」と表現されます。


痰の検査

痰の原因を調べるため、胸部レントゲンやCTなどの検査に加えて、喀痰検査を行う場合があります。喀痰検査には下記の2つがあります。

喀痰培養検査

肺炎や気管支炎の原因になっている細菌や真菌(カビ)などを見つけます。
痰をスライドガラスに塗って顕微鏡で観察する塗抹検査と、痰の中の菌を培養して菌の種類を調べる培養検査があります。
培養検査は一般の細菌は3~5日、結核菌は発育が遅いため6週間ほどかかります。
結核を積極的に疑う場合は、3日間連続、合計3回起床時に痰を採取して検査することもあります。

喀痰細胞診

喀痰痰細胞診とは、痰の中の細胞成分を顕微鏡でみる検査です。肺癌の場合、がん細胞が痰の中に剥がれ落ちることがあるため、痰を調べてがん細胞を検出します。


痰が貯まっている状態が続くとどうなる?

下記のような事が予想されます。

  • 痰により咳が誘発され、疲労や不眠の原因になる。
  • 空気の通り道に痰があると、空気は通りづらいため息苦しくなる。
  • 気管支内に痰が貯まることで、気管支の狭窄や閉塞が生じ、その先に空気が入らなくなる。すると、肺がつぶされた状態(無気肺)になり、血液中の酸素濃度が低下したり、肺炎になりやすい状態になる。

痰が長引く場合、放っておいても問題ない?

痰が長引く場合、放っておいても問題ない?前述のように、気道に刺激や炎症が続くと痰が増えます。
咳や痰の原因として最も多い原因は風邪ですが、長くても3週間以上続くことはありません。このため、これ以上続く場合には、比較的元気でも自己判断で放置せず、医療機関を受診して適切な検査、治療を受けることが大切です。


痰を止めるためにできること

まずは痰が出る原因を調べ、適切な治療を受け、過剰な痰の産生を抑えることが必要です。しかし、日常生活に支障をきたす場合には、症状を和らげる処置が必要になります。
咳や痰を和らげる主な方法は以下になります。

体位ドレナージ

体力や筋力が落ちてしまった高齢者などは自力で貯まった痰を喀出することが難しい場合があり、体位ドレナージが有効な場合があります。胸部レントゲンやCT画像の所見を踏まえて痰が貯まっている場所を把握し、痰が貯留した部位が上になるような体位をとることで、重力によって末梢の痰を中枢へと移動させ、排出しやすくする方法です。

濡れマスクをつける

空気が乾燥していると痰が硬くなり喀出しにくい状態になります。
加湿器の利用も効果的です。

水分をとる

喉が乾燥すると気道を刺激して咳が出やすくなるため、こまめに水分を摂るようにしましょう。また水分を多く摂取すると、痰がサラサラになって排出しやすくなります。

漢方薬を活用する

痰症状に有効とされる漢方薬の例をご紹介します。

さらさらとした水様の痰がでる場合

小青竜湯(しょうせいりゅうとう):うすい水様の痰を伴う咳や鼻水が出るとき、風邪や気管支炎、気管支喘息、鼻炎などの症状に効果がある漢方薬です。

痰の量が多い場合

清肺湯(せいはいとう):痰の多くでる咳、粘り気が強く切れにくい痰が出るときに効果がある漢方薬です。

切れにくい痰が出る場合

麦門冬湯(ばくもんどうとう):痰が切れにくく、ときに強くせき込んだり、咽頭の乾燥感が気になるときに効果がある漢方薬です。


痰の色で何が分かる?

痰の原因疾患は多岐にわたり、同じ疾患でも患者さんによって痰の性状が異なる場合もあります。このため、痰の見た目だけで原因を明らかにすることは不可能です。ただし、以下の表のような傾向があると言われており、参考にすることがあります。

性状・色調 原因疾患
粘液性
(無色透明~白色で、べたべたとした痰)
気管支炎、COPD気管支ぜんそく
漿液性
(無色透明~白色で粘土が低くサラサラした痰)
ARDS、肺水腫(ピンク色、泡沫状)
膿性
(サラサラとした痰が硬くなり、白色から黄色や緑色に変化した状態)
気道感染症、肺炎、COPD増悪、気管支喘息発作
緑色 緑膿菌感染
オレンジ色 レジオネラ
鉄さび色 肺炎球菌感染
鮮紅色・黒褐色 血痰、喀血

痰が絡むときは何科を受診すればいい?

痰が絡んでお悩みの際には、呼吸器内科を受診しましょう。
特に、以下に該当する場合には、できるだけ早期に当院までご相談ください。