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帯状疱疹ワクチンについて

令和7年7月1日から、横浜市でも帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始となりました。
今回は、帯状疱疹とはどのような病気なのか、なぜワクチンを打つ必要があるのか、を中心に解説していきます。

 

 

<帯状疱疹とはどのような病気か?>

・水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こる皮膚の病気です。
日本人の成人の9割以上は、この水ぼうそうウイルスが体内に潜んでいます。
つまり、こどもの時に水ぼうそうにかかっていない、という方でも、気が付かないうちに感染して体内に潜んでいる可能性が高いということです。
加齢やストレスなどによって免疫機能が低下すると、この水ぼうそうウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。
胸や腹部、背中などの上半身に多く現れますが、顔面や頭部、腕など様々な部位で発症する可能性があります。

・はじめは皮膚の痛みや違和から起こり、やがて痛みのある赤い小さなぶつぶつ(発疹)が帯状に増えていきます。発疹は水ぶくれに変化し、膿を伴うことがあります。水ぶくれは1週間ほどで破れてかさぶたになり、治癒していきます。

 

<帯状疱疹は人にうつるのか?>

帯状疱疹として他の人へうつることは基本的にはありません。しかし、水ぼうそうの予防接種を受けていない赤ちゃんや、過去に水ぼうそうにかかったことのない方は、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫がなく、感染すると水ぼうそうを発症する可能性があります。
皮膚にできた水疱に触れることや、水疱から出たウイルスを吸い込むことで感染がおこります。

 

<なぜ予防が必要なのか?>

・発症率が高い
帯状疱疹は50歳代から発症率が上昇し、80歳までに3人に1人が発症すると言われていますので、高齢者にとっては発症リスクが高い病気と言えます。

・様々な合併症の存在
前述のように、帯状疱疹は上半身に多く現れますが、発疹が出現する場所によっては様々な合併症を引き起こす恐れがあります。
特に顔面の帯状疱疹は注意が必要です。眼の周囲では、角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎などにより、視力低下や失明のリスクがあります。耳の周囲では、顔面神経麻痺、めまい、耳鳴り、難聴などの症状が出ることがあります。その他の部位でも、運動神経が傷つくことが原因で四肢の麻痺症状が生じたり、排尿障害を生じたりするなどの報告があります。

・後遺症がある
帯状疱疹の後遺症として、帯状疱疹後神経痛があります。痛みの程度は人によって異なりますが、刺すような痛み、引き裂くような痛み、と表現されることが多く、日常生活に影響をきたすことも少なくありません。
数か月で改善する方もいれば、年単位で症状が続く方もいます。

 

<ワクチンの種類は?>
帯状疱疹の予防には、2種類のワクチン(組み換えワクチンもしくは生ワクチン)のいずれかを選択して接種します。
以下にそれぞれのワクチンについての特徴を挙げています。

●組み換えワクチン(シングリックス)
メリット:
水痘ワクチンと比較して、発症抑制や帯状疱疹後神経痛の予防効果が高く、有効性の持続期間が長い

デメリット:
2回接種する必要がある
痛みや腫れなどの副作用が高頻度
価格が高い

●水痘生ワクチン
メリット:
1回接種で済む(シングリックスは2回)
副作用が軽度であることが多い
シングリックスに比較して価格が安い

デメリット:
シングリックスと比較して、発症抑制や帯状疱疹後神経痛の予防効果が低く、有効性の持続期間が短い

  弱毒生水痘ワクチン(ビケン) シングリックス
ワクチンの種類 生ワクチン 不活化ワクチン
帯状疱疹の予防効果 51% 50歳以上:97%
70歳以上:90%
神経痛の予防効果 67% 50歳以上:100%
70歳以上:86%
効果の持続期間 5年間 少なくとも10年間以上


ワクチン接種の本来の目的である「帯状疱疹の発症や後遺症の予防」といった観点ではシングリックスの方が優れているデータとなっていますが、最終的には費用面や副反応のリスクなども考慮いただいたうえで、どちらかを選択していただくこととなります。

ワクチンをご希望の方は、在庫確保の必要があるため、事前にクリニックまでご連絡をお願いいたします。